バイオガス発電について

事業概要

国際社会は、持続可能な開発目標(SDGs)の採択やパリ協定の発効など、人類の生存基盤である地球環境の保全と、持続可能な社会実現に向けて大きく動き出しています。

日本においても政府によりSDGs実施指針が決定され、「省・再生可能エネルギーの導入・国際展開推進」・「気候変動対策」・「循環型社会の構築」が優先課題の一施策にあげられています。また、環境・経済・社会の課題の同時解決に向けた方向性も示され、「地域エネルギー・資源の最大限の活用」・「再生可能エネルギーによる地域のエネルギー収支の改善」もうたわれています。

このような情勢のなか、環境学習都市西宮にある当社おいてもこの国際的・社会的課題に貢献すべく、リサイクル・再生利用を前提とする新しいエネルギー創造システムの構築に取り組んでいます。

リヴァックスは、再生可能エネルギーとなる食品由来の有機性廃棄物を原料とした西宮バイオガス発電プラントを建設しました。

西宮バイオガス発電プラントでは、以下の効果が見込めます。
1. 再生可能エネルギーを供給することで、同等電力量を化石燃料で生み出したときに比べ、年間1,800㌧のCO2排出量(温室効果ガス)が削減できる
2. 西宮市、阪神エリアを中心とした食品由来の廃棄物をエネルギー源として活用し、約1,000世帯分の再エネ電気を生み出す

このように西宮バイオガス発電プラントは、阪神地域という都市部において非常に困難であった食品循環資源を有効活用した再生可能エネルギーシステム構築の一翼を担う施設です。

リヴァックスのバイオガス発電事業の特徴

環境対策の順守と省スペース設計により実現した都市型バイオガス発電施設

環境対策を厳重に行っており、また省スペース化を意識した設計により都心部での立地を可能にしました。

1回の排出で単一品が大量に発生する排水処理汚泥や工程排水等の産業廃棄物も問題なく受入可能

産業廃棄物の処理を前提とした処理フローになっており、大量の単一品でも調整槽にて投入原料の性状を均一にすることで受け入れが可能です。

油分や塩分のある食品残さや、袋入り、段ボール梱包物でも処理可能

従来の処理方法では対応できなかった成分や、性状、梱包済みの製品も、保管倉庫と前処理施設で破砕を行うことで、そのまま受け入れが可能です。

メタン発酵時に生じる消化液は脱水処理をして肥料化リサイクル

メタン発酵の過程で発生する消化液には農作物に必要な成分を多く含んでおり、化学肥料の代替肥料として利用されます。そして、肥料としての利用以外にも消化液の資源循環や地域資源の有効活用方法を研究していきたいと考えています。

発電した電気は地域電力として利用

バイオガス発電により発電した電気はFITを利用して売却し、地域電力として供給されます。また、発電時に発生する熱はメタン発酵槽の温度調整に活用します。

バイオガス発電とは

バイオガス発電とは、家畜の糞尿や、食品由来の廃棄物等を原料として、メタン発酵を行い、発生したバイオガスを燃料にバイオガス専焼発電機で発電する方法です。
リヴァックスでは、産業廃棄物である排水処理汚泥や、食品残さを原料にバイオガス発電を行い、発電した電気はFITを利用し売電を行います。

食品工場から排出される食品廃棄物はほとんどが飼料化や堆肥化によって再利用されていますが、近年では、CO2削減や再生可能エネルギー利用としての需要の増加等の観点から食品廃棄物のバイオガス化が注目されています。

  • バイオガス発電のメリット

    代表的な発電方法である火力発電では、石油や石炭などの化石燃料を原料に、燃やしたエネルギーで発電を行っており、その過程ではどうしてもCO2が発生してしまいます。対してバイオガス発電は、バイオマス由来のバイオガスを利用するためCO2を発生させないカーボンニュートラルのクリーンな発電方法です。

  • バイオガス発電で利用する原料

    代表的な原料は有機性廃棄物と呼ばれる家畜の糞尿、食品工場から排出される食品残さ、下水汚泥、家庭から排出される生ごみ等が対象になります。農地や都市から発生する産業廃棄物から再生可能エネルギーを創造することで循環型社会に貢献します。

  • バイオマス発電との違い

    バイオガス発電とよく似た言葉の「バイオマス発電」は、バイオマス燃料を燃焼させた蒸気でタービンを回して発電を行います。原料となるバイオマス燃料には、廃棄される木くずや間伐材、可燃性ゴミ、精製した廃油等が使用されます。

  • FIT認定とは

    固定価格買取制度のことで、再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、国が定める固定価格で一定の期間電気事業者に調達を義務づける制度です。この制度により、発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、より普及が進むことが狙いです。「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)」に基づき、2012年7月1日にスタートしました。

メタン発酵(嫌気性発酵)とは

メタン発酵とは脱水汚泥や食品残さ等の有機性廃棄物を嫌気性条件下で働くメタン菌(嫌気性微生物)によって分解し、メタンガス(60%)と二酸化炭素からなるバイオガスと、消化液(発酵残さ)を生成する処理方法です。バイオガスは発電や熱利用等の用途があり、消化液は堆肥の原料として農地などで活用されます。
また、メタン発酵方法には槽内温度と汚泥濃度によって、「高温/中温」「乾式/湿式」で分類されます。安定した発酵を行うため、リヴァックスでは「中温湿式方式」を採用しています。

発酵槽の中では、メタンガスを発生させるため

  • ①加水分解
    酵素の働きにより、大きな分子が小さな分子に分解される
  • ②酸生成
    加水分解により小さな分子となった物質はそれぞれ有機酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸等)やアルコール類に生成される
  • ③メタン発酵
    最後の段階でメタン発酵菌の働きよるメタンの生成が行われる。メタンの生成は大きく2種類存在し、1つは酢酸をメタンにまで分解するもの。もう1つは二酸化炭素と水素からメタンを生み出す。

のサイクルが行われています。

  • メタン発酵処理の特徴

    従来の処理方法である焼却処理では難しい含水率の高い廃棄物や、塩分、油分を含んだ廃棄物も発酵槽投入前の調整槽にて原料の性状を均一にすることで処理が可能です。

  • メタン発酵残さ(消化液)の有効活用

    消化液とは、メタン発酵を行った後の発酵残さで窒素、リン、カリウム等を含んだ泥状の液体のことです。投入した原料とほぼ同じ量が消化液として発生します。液中の残留カロリーや窒素成分などを生かして肥料としての活用が可能です。遠心脱水機で固液分離し、脱水汚泥として発酵堆肥や燃料などにも活用されます。

  • 再生可能エネルギーとは

    再生可能エネルギーとは「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」と定義されており、政令においては、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマスが定められています。これらは温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、エネルギー安全保障にも寄与できる有望かつ多様で、重要な低炭素の国産エネルギー源とされています。

  • 中温湿式方法とは

    槽内温度が中温(37℃前後)の中温発酵法は、一般的に活動する菌の種類が多いため負荷変動に耐性があるが、発酵速度が遅いのに対して、高温発酵法(55℃前後)は、活動できる菌が限定されるため不可変動に弱く、高度な運転管理が求められるが、発生するガスが多く、発酵速度が早いという特徴があります。
    また、槽内の汚泥濃度が湿式の場合、液体の状態で原料を攪拌させてメタンガスを発生させます。状態が液体のため動植物性残さや脱水汚泥などの発酵処理に向いています。一方で乾式では、家畜ふんや古紙などの固形有機性廃棄物を発酵させてメタンガスを生成します。メタン生成が発酵槽内に充填された固体表面で行われています。

発電の原料として受け入れる産業廃棄物

有機性汚泥

食品工場の排水処理により生じる余剰汚泥やスカム、
飲食店などの厨房排水(グリストラップ)※肥料原料として利用可能な成分のものに限る

  • 排水汚泥
  • 脱水汚泥
  • スカム
  • グリストラップ

植物性残さ

食品や医薬品、香料の製造副産物として発生する植物性の残さ

  • コーヒー粕
  • 茶ガラ、茶粕
  • 緑茶粕
  • ウーロン茶粕
  • 紅茶粕
  • 麦茶粕
  • 大豆粕

工程廃液

製造工程で発生する有機性の廃液

  • 食品廃液
  • 培養廃液
  • 調味液各種
  • 抽出液各種
  • 煮汁廃液
  • 洗浄廃液

食品残さ

食品の製造時に発生する加工残さやロス品 ※製品包装品も含む

  • 野菜くず
  • 果実くず
  • 麺くず
  • 豆腐、油揚げ
  • 洋菓子くず
  • 和菓子くず
  • プリン、ゼリー
  • ヨーグルト
  • アイスクリーム
  • 各種フィリング類
  • ジャム
  • ソース類
  • 調味料各種

飲料製品・濃縮果汁

製造時の不良品や出荷期限切れ等で発生する廃棄飲料製品※製品包装品も含む

  • 水、ミネラルウォーター
  • コーヒー飲料
  • 炭酸飲料、エナジードリンク
  • 果実飲料、野菜ジュース
  • 機能性飲料、スポーツドリンク
  • 牛乳、乳性飲料、大豆豆乳液
  • 緑茶、麦茶、紅茶、ウーロン茶
  • 低アルコール飲料、チューハイ、ワイン

西宮バイオガス発電プラントフロー

廃棄物はまず前処理棟に集められ、容器に入った飲料製品や食品等の廃商品は破砕機によって容器と中身に破砕・分別されます。脱水汚泥は直接混合ピットへ投入されます。また吸引車にて回収した有機性の廃水は液体原料受入槽に投入されます。
その後、廃棄物は原料混合ピットに集められ、調整槽へ送られます。調整槽では成分を均一にし、微生物のいるメタン発酵槽へ送ります。
メタン発酵槽にて、微生物がメタン発酵を行うことでバイオガスを生成することができます。メタン発酵後の液体残さ(以下、消化液)は、二次発酵槽へ送られます。
二次発酵槽は消化液の貯留と、上部のガスバックでバイオガスを貯留します。貯留したバイオガスは最終的に発電機へと送られます。
発電機はバイオガスを燃料にして発電し、再生可能エネルギーを生み出します。また、発電に伴って発生した廃熱はメタン発酵槽の加温のため利用します。