リヴァックスコラム
第12回 残置廃棄物通知を読む
「BUNさんに聞いてみよう」のコーナー。「残置廃棄物通知を読む」
前回は「単回使用医療機器通知」と言うことで一般法と特別法という
ちょっと難しい理屈を聞いたんですけど、今回はどんな話ですか?
前々回「タスクフォース通知」の第3で「地下工作物の存置」を取り上げたんだけど、これを読んでいただいた方から「<存置>と<残置>って違うんですか?」という質問を受けました。
そこで、今回は「残置」について見ていきましょう。
私もそこんとこは引っかかったところなんで辞書で調べてみたんですよ。
「残置」はまさにそのまま「残しておくこと。」とあって、「存置」は「現存の機関・施設・制度などを、そのまま残しておくこと。」とありました。
日本語としては大差は無いように思いますが、ネットで検索したら結構いろんなことを書いている人がいました。建設関係や廃棄物処理関係者が多かったので、業界では注目されていることかなぁと感じたよ。
恥ずかしながらBUNさんは、タスクフォース通知が出るまでは「存置」と言う言葉すら知りませんでした。
正式には「そんち」と読むみたいだね。「ぞんち」と呼んでも間違いでは無いと出てたけど、そんなことは「そんちあげませんでした」。
下手なダジャレはいいから解説に移ってください。
失礼しました。
「地下工作物の存置」については前述の通りなので、「残置」についての通知をまずは紹介しましょう。最近では平成30年6月22日に環境省の一般廃棄物、産業廃棄物担当課長名で発出されたものです。
へぇ、業界が注目しているのに、出されたのはつい最近なんですね。
いやいや、この通知は多少の変更はあるにしてもあくまでも出し直しされた通知で、「廃棄物の残置」については昔からこの業界では課題の一つだったんだ。
「平成26年2月3日付け・・・で周知しているところであるが」って書いてあるし、この内容はBUNさんが知る限りでは、古くは昭和56年の疑義照会回答通知の問15「建設工事の現場から搬出される産業廃棄物」として出てきているんだ。
そんな昔から通知されていたのにどうして平成26年に出されて、
そして4年しか経っていないのに平成30年にまた発出されたのかなぁ。
これは推測にしか過ぎないんだけど、図の事件が起きたからじゃ無いかなぁ。
どれどれ?
ふぅん。市役所が管理している公園で、工事があったんだけど、その工事を行う前から既に存在していた廃タイヤとかコンクリートとか遊具なんかを、その工事業者に丸ごと頼んじゃったって話ですね。
廃棄物処理法を勉強してきたリヴさんなら判ると思うけど、工事から発生する建設廃棄物の排出者は誰かな。
それは法律第21条の3第1項の規定により工事の元請業者だよね。
じゃ、その工事が始まる前に既に廃棄物として存在していた廃タイヤとか廃遊具の排出者は誰かな?
それは当然、それまでの所有者や管理者だよ。
そうだね。その「当然」のことを通知したのが、この通知。
でも、なぜ、そんな当然のことを「間違った」運用をしちゃうんだろう?
何回も通知しなくちゃいけなかったのかなぁ。
これはあくまで推測なんだけど、
昭和56年の時はこの疑義応答通知と前後して「建設廃棄物の処理の手引き(昭和57年2月8日通知)」が出され、この時初めて建設系廃棄物の排出者は元請だって明示している。
そして、平成26年にはさっきの事件が起きた。
じゃ、直近の平成30年の最初に見た通知はどうして?
工事が始まる前に既に廃棄物として存在していた廃棄物の排出者は元々の所有者や管理者であるってことは、平成26年の通知も平成30年の通知も同じなんだけど、平成30年の通知では次の部分が強調されたようだね。
「残置物については一般家庭が排出する場合は一般廃棄物となる」
たとえば、一般住宅を解体するときに要らなくなった学習机や応接セットが残されていたとする。この学習机や応接セットは一般廃棄物でしょうか?産業廃棄物でしょうか?
解体工事に伴って発生する木くずなら工事業者の事業活動に伴って発生しているから産業廃棄物だけど、それ以前に一般国民が家庭生活で不要になったから排出されるんだったら一般廃棄物だよね。
そう。そのとおり。だから、そういった一般廃棄物を扱える人物は排出者自ら、市町村、それに一般廃棄物処理業者ってことになる。
なるほど。そういった「残置廃棄物」はいくら産業廃棄物の許可を持っていたとしても、
工事の元請であったとしても扱えないってことね。
そうだね。ただねぇ、現実的にはこの判断もなかなか難しいんですよ。
と言うと?
たとえば、内装を変えようとして電気工事を行おうとする。その時、古い照明器具を交換しようとする。ところが、一部既に壊れている照明器具を施設の所有者が取り外していたとする。
さて、この古い照明器具の排出者は誰でしょう。みたいな。
難しいね。簡単に「建設系廃棄物」か「残置廃棄物」か判断出来る方法はないの?
昔、昔、BUNさんが初めて廃棄物処理法を担当した時代の先輩は次のように教えてくれた。
「建物を箱と見立てて、その箱を逆さにしてみる。その時、下に落ちるのは残置廃棄物。落ちないのは建設廃棄物」とね。
なるほど。作り付けの棚は逆さにしても落ちてこないからこれは解体工事の時は建設工事に伴って排出されたと判断して建設廃棄物。でも、カラーボックスのように単に置いておいただけの物は下に落ちるから建設廃棄物とは言えず「残置廃棄物」になるってことね。
それ分かり易くていいじゃないですか。
ところが、最近は地震も多くて家電製品、テレビや冷蔵庫まで倒れないようにボルト止めしているから逆さにしても落ちてこない。
家電製品まで「建設廃棄物」とするのは抵抗があるね。難しいものだね。
だから、「残置廃棄物」というのも現実にはグレーゾーンの課題もあって何年に1回程度は多少改正した通知を出さざるを得なくなるんでしょうね。
地下工作物の「存置」も難しかったけど「残置」廃棄物もなかなか難しい要因をはらんでいるんですね。
皆さんもなんか疑問に思うことがあったらメールよろしくね。じゃ、またね。