リヴァックスコラム

第15回 専ら再生通知を読む その3

長岡 文明氏

前々回から今年2月3日に発出された「専ら再生利用の目的となる廃棄物の取扱いについて」と言う通知を取り上げています。

ここまでは
1.なぜ今回の通知は出されたのか?
2.「専ら再生」はなぜ、いつから「4品目」として運用されてきたか
3.通知行政の難しさ
4.一般廃棄物である「専ら再生」の取り扱いは?
5.バックボーンにある最高裁判決と検事の著作

を解説してもらっています。

今回はこの続きですね。じゃ、BUNセンセ、お願いします。

6.「専ら」の基準は?

前回までの2回で大きな部分は取り上げたので、重複するかも知れないけど今回は枝葉の部分。繰り返しになるけど、令和5年の通知が出されたのは「明確化」のためでしたね。
ということは、「専ら再生」という運用は「不明確」な要因がいくつかある、ということです。

じゃ、まず法律条文にある要因から見ていきましょう。

(産業廃棄物処理業)
第十四条 産業廃棄物(中略)の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(中略)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。

まず、「専ら再生」の「専ら」とはどの程度か?
具体的にはリサイクル何%以上を「専ら再生」と定義することが妥当なのか?

リヴさんは何%位が妥当だと思う?

ん~、感覚としては「専ら」って言うのは「大多数」、「ほとんど」ってイメージだから9割以上かな。

専ら再生4品目の中に「古紙」があり、昔からの分かり易い例としては古新聞を原料としてトイレットペーパーにリサイクルする、これなんか典型的な例だよね。
でも、このトイレットペーパーだと現在は大分進歩したと思うけど、製造過程、特に「脱墨」と呼ばれるインクや汚れを除く工程で結構汚泥が発生するので、重量で計算すると5~6割程度なんだ。

一方、がれき類(コンクリート殻)のリサイクル率は今や98%を超えているんじゃないかなぁ。

それは比較するのはちょっと不公平な感じがするなぁ。
だって、がれき類のリサイクルって砕いて再生砂利にするのが多いんでしょ。多少の夾雑物があるとしても100トンのがれき類があれば98トン位にはなりそうだよ。

そうだね。家電リサイクル法の対象にしている冷蔵庫なんかでも、まだリサイクル率は6割程度だった思うし。このように一律に「再生率」を規定すること自体、難しい。

次は?

7.「のみ」の解釈

条文では「産業廃棄物のみの収集又は運搬」って言ってますよね。
この「のみ」の解釈がまたまた人によって違ってしまう。

そうそう、もともとこのシリーズのスタートは令和5年2月3日に「専ら再生利用の目的となる廃棄物の取扱いについて」と言う通知だったよね。
この通知が発出された本来の趣旨はこの「のみ」の解釈、運用が自治体により異なっていることだったみたいですよね。

リヴさんは、この「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者」をどう解釈しますか?

これまでの話や運用を知らずに、日本語として読めば「それだけを扱っている人物」ってことかなぁ。たとえば「リサイクルする古紙だけを扱っている人物は」となるし、さらに「産業廃棄物」と言っているんだから「リサイクルする産業廃棄物である古紙だけを扱っている人物は」となるかなぁ。

そう読むのが日本語としては一般的だとBUNさんも思います。
しかし、ここで廃棄物処理法を知っていると疑問、不思議に感じる点がいくつか出てしまう。

たとえば?

「産業廃棄物である古紙」だけではなく「一般廃棄物である古紙」<も>扱っていたら該当にならないのか?
「廃プラスチック類については正規の許可を取って商売している人物が古紙をリサイクルするために扱うときは許可は必要になるのか」と言ったことだね。

なるほど。なんの知識、資格も無い人物でさえ「許可不要」としているのに、他の品目の許可を取っていて一定の知識や資材を持っている人がやると「無許可」を問われるというのは変な感じがするね。

法律の専門家の人達も「法の公平性」から言っても、「扱えて当然」と言うスタンスが大勢のようですね。令和5年の通知でも、こういった人達でも「専ら再生4品目」は許可無しに扱える、ということを確認している。

次は?

8.通知の文言「既存の」

続いて4品目に言及している昭和46年の施行通知、同じ表現である令和2年の「許可事務通知」を再確認してみよう。

「・・・すなわち、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維を専門に取り扱つている既存の回収業者等は許可の対象とならない」とある。
ここで登場する「既存の」だね。

昭和46年の通知では「昭和46年以前」、令和2年の通知では「令和2年以前」ってことになるのかな。

おそらく、この「既存の」という裏に隠された趣旨としては、前回(その2)で述べた昭和45年の廃棄物処理法スタート時点の既得権者である「廃品回収業」ということであったと思うんです。しかしながら、法律としては「既得権を保護します」なんてことはどこにも規定していない。

よって、この「既存の」という文言は、「7.」の「のみ」と同様に、今となっては公平性の観点から「意味を成さない」としていいと思います。

次は?

9.通知の文言「回収業者等は」

同じく通知に登場する「回収業者等は」の「等」とは「回収業者」以外にどんな人物がいるのか。

どうなんですか?

さっきも見てもらったとおり、この通知の初出が昭和46年。
実は、平成4年までは「廃棄物処理業許可」は「収集運搬業」も「処分業」も一緒だったんだ。あわせて「処理業」だったんだね。
これもBUNさんの推測なんだけど、昭和46年の時点ではまさに「集める人」だけは「許可不要」で、実際に大きな工場で「再生する人」「処分する人」まで「許可不要」とは想定していなかったのではないかと思う。だからこそ「回収業者」という表現であり「再生業者」とは表現していない。

でも、昭和46年の廃棄物処理法スタート時点から約四半世紀が経った平成4年まで「専ら再生4品目は許可不要」と運用してきて、法律自体が「収集運搬」と「処分」に分離したからと言って今更「処分行為は許可の対象です」とはできなかった。まさに既得権を尊重したってところじゃないでしょうか。
法律の文言も(第7条第6項、第14条第6項)処分業でも収集運搬業と同じく「ただし書」を規定したので、現在でも「回収業者等は」の解釈として「収集運搬業、処分業」(正確には「収集運搬を業として営む者、処分を業として営む者」。「業者」という表現は廃棄物処理法では「許可を有している者」と定義しているので。)としていいと思います。

10.その他、老婆心

ふぅ~、いろいろあるねぇ。これじゃ、半世紀に亘りすったもんだが起きるっていうのも理解できるよ。その他、お伝えしておくことある?

令和5年の通知が出たとき、これを取り上げた業界紙があった。この記事の内容が「誤解」しているとして、環境省はすぐにHPで訂正を指摘した。
今回の通知に限らず「専ら再生」で誤解している人達も多いのでいくつか老婆心ながら注意しておきたい点があります。

(1)通知の対象となっている「専ら再生4品目」はあくまでも「廃棄物」です。前述の業界紙でも「有価物である専ら再生対象の物は・・・」的な表現がありましたが、そもそも「有価物」であるなら、最初から許可は不要。廃棄物処理法の対象外な訳です。
「・・・専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの・・・」と「産業廃棄物」と明記していますよね。法律の条文、通知の対象物は「廃棄物」であり、有価物である「物」はいくら同じ「リサイクル工程」を行っていたとしても、この条文、通知の対象ではありません。

まぁ、分かり易く言えば「処理料金を徴収していても許可が不要」となるのが「専ら再生」なんですね。

まぁ、本来有価物か廃棄物かは総合判断説によるもので「売り買い」だけで決まるものでは無いけど、分かり易い表現としてはそのとおりだね。
(2)廃棄物ですから「許可は不要」でも、その他の規定は適用になります。

たとえば?

産業廃棄物である「専ら再生4品目」なら、委託契約書は適用になるね。ただし、マニフェスト(産業廃棄物管理票)については、省令第8条の19第3号の規定により不要です。
(3)特別管理産業廃棄物については「専ら再生」の規定はありません。

それはどうして?

さっきも述べたけど、「専ら再生4品目」について最初に通知したのは昭和46年。「特別管理」制度がスタートしたのは、平成4年(平成3年改正)7月から。既に四半世紀経っていた。そのため、世の中は「専ら再生」と言えば「4品目」として運用してきていた。

改めて「専ら再生4品目」とは?

「古紙、くず鉄、あきびん類、古繊維」です。なにを今更。

この4品目に特別管理産業廃棄物はあるかい?

アッ\(◎o◎)/!そうかぁ。
4品目に特別管理産業廃棄物になる物は無いね。(PCB付着物等極めて例外的な物はありますが)

そうだねぇ。これもBUNさんの推測だけど、平成3年に廃棄物処理法を改正した旧厚生省の担当者の頭には「専ら再生に特別管理産業廃棄物はそもそも無いから条文にする必要は無いな」と考えたんじゃないかなぁ。

(特別管理産業廃棄物処理業)
第十四条の四 特別管理産業廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(中略)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその特別管理産業廃棄物を運搬する場合に限る。)その他環境省令で定める者については、この限りでない。

ほんとだ。特管産廃の条文の「ただし書」には「専ら再生」の文言が抜けている。

さて、3回に亘ってお届けした「専ら再生通知」。要因が盛りだくさんだったので、最後に復習を兼ねて確認。(詳細は本文を見てね)
(1)令和5年発出通知は昭和46年から連綿と続く趣旨の確認。
(2)法律条文では「専ら再生」だが、現実には「許可事務通知」で示している「4品目」。
(3)そもそも有価物は条文、通知ともに対象外。廃棄物が対象。
(4)過去には最高裁まで争った事例もある。
(5)「専ら再生」と言っても「再生率」などは具体的に示していない。
(6)条文、通知に登場する「のみ」「既存の」は今は意味はないと言っていい。
(7)「専ら再生4品目」は、あくまで「通知」なので、自治体の判断となる。
(8)しかし、現実には各種リサイクル法の規定等も有り、おそらく「4品目」を超越する運用は難しい(のではないかと推測)

「許可不要制度」は一歩間違うと「無許可」。廃棄物処理法では最も重い罰則の「最高刑懲役5年」の違反に直結するだけに早とちりせず、慎重に検討していく必要がありますね。
じゃ、次回もよろしくね。