リヴァックスコラム

第29回 「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」について聞いてみよう その5

長岡 文明氏

リヴァックスコラム愛読者の「むつご」さんからのご質問を受けて、再資源高度化法を取り上げています。
今回は前回からの継続で、法律条文を確認していきましょう。
なお、条文の原文は長いのでネット等でご確認下さい。「BUNさん流簡略表現」になることをご了解下さい。

再資源高度化法逐条確認(第16条~第19条)

第16条からは「第三節 高度分離・回収事業」の話になります。
ただ、この「高度分離・回収事業」なるものが、現時点ではよく判りません。

条文を確認してみましょう。

第十六条 廃棄物(その再資源化の生産性の向上により資源循環が促進されるものとして環境省令で定めるものに限る。)から高度な技術を用いた有用なものの分離及び再生部品又は再生資源の回収を行う再資源化のための廃棄物の処分の事業(以下「高度分離・回収事業」という。)を行おうとする者は、環境省令で定めるところにより、高度分離・回収事業の実施に関する計画(以下「高度分離・回収事業計画」という。)を作成し、環境大臣の認定を申請することができる。

「よく判らない」一因として、当然ながら「環境省令で定める」の省令がまだ出ていないということもあるのですが、個人的に戸惑っていることとして、前回まで取り上げてきた「高度再資源化事業」と、具体的にどう違うのか?という点です。

廃棄物処理法の概念としての「処理」とは、「収集運搬と処分」、そして「処分」とは「中間処理と最終処分」。「中間処理」とは、一般的には「物理的、化学的、生物学的に性状を変える」こととされています。

後の条文で出てくるのですが、この「高度分離・回収事業事業」には「収集運搬」は含まないようです。また「分離・回収事業」と言っているくらいですから、単純埋立や単純焼却は含まないでしょう。と、なると廃棄物処理法の概念として残るのは「中間処理」だけなのですが、そうなると前述の「高度再資源化事業」とどう違ってくるのか?あくまでも個人的な推察ではありますが、もしかすると「分離・回収事業」は廃棄物処理法の中間処理業にも(自治体によっては)該当させていない、単なる「選別」を想定しているのかもしれません。

ちなみに、「選別」は廃棄物処理法の過去の通知により「単純な手選別等は収集運搬業に含むとしてよい(すなわち、中間処理業許可は不要)」旨があります。このイメージとしては、たとえば解体木くずを収集運搬している時に、釘が数本刺さっていた。それを釘抜きで取り除く作業、といったレベルのこととして運用していることが多いです。こういった要因によって「分離・回収事業」を別扱いにしたのかもしれません。
まぁ、これも政省令が公布され、マニュアル等が発出されれば明確になってくると思います。

ちなみに、法律案と同時に提示された「概要」によると、「太陽光パネルをガラスと金属に分離」、「紙おむつのリサイクル」などを例として挙げているようです。

第16条第2項以降は具体的な「高度分離・回収事業事業認定申請」のための手続きの規定です。BUNさんが注目した条項のみ紹介していきましょう。

第3項 環境大臣は、第一項の認定の申請があった場合において、その申請に係る高度分離・回収事業計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。

第5号 高度分離・回収事業の対象となる廃棄物が市町村から処分を委託された一般廃棄物である場合においては、当該高度分離・回収事業計画に従って実施する当該廃棄物の処分の実施が、当該市町村の一般廃棄物処理計画(廃棄物処理法第六条第一項に規定する一般廃棄物処理計画をいう。)に適合しているものであること。

これに匹敵する規定は前回まで取り上げた第11条の「高度再資源化事業」にはありません。なぜ、「高度再資源化事業」にはなくてよく、「高度分離・回収事業」には必要なのかよく判りません。

そもそも、「市町村から処分を委託された一般廃棄物」であるのに「当該市町村の一般廃棄物処理計画」に適合していない、などと言うことが想定できるでしょうか?本来、そのような「委託」を市町村は出来ないはずですよね?自分で策定し自分で決定している基本計画に合わないような委託をする市町村が出てくる状況とはいったいどのようなケースなのでしょうか?

その他の条項については第17条の「認定の変更等」まで、第11条の「高度再資源化事業」の規定とほぼ同じようです。

(廃棄物処理法の特例)
第十八条 認定高度分離・回収事業者は、廃棄物処理法第七条第六項又は第十四条第六項の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けないで、認定高度分離・回収事業計画に従って行う再資源化に必要な行為(一般廃棄物又は産業廃棄物の処分に該当するものに限る。)を業として実施することができる。

第18条は処理業「許可不要制度」の規定です。ただし、第11条の「高度再資源化事業」では認定を受けると一般廃棄物・産業廃棄物ともに収集運搬・処分とも許可不要でしたが、こちらの「高度分離・回収事業」については、処分業のみ「許可不要」です。収集運搬業については一般廃棄物・産業廃棄物ともに「業の許可不要」という規定はありません。

なぜなのかは、以前にも書きましたが、現時点では不明です。政省令が出されるのを待ちましょう。

第2項~第4項までは、「高度再資源化事業」と同様に「政令で定める基準の遵守」「処理基準、名義貸し、改善命令等について許可業者とみなす規定」を置いています。

第5項 第十六条第二項第七号に掲げる事項が記載された高度分離・回収事業計画について同条第一項の認定を受けた認定高度分離・回収事業者は、廃棄物処理法第八条第一項又は第十五条第一項の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けないで、認定高度分離・回収事業計画に記載された当該廃棄物処理施設を設置することができる。

これも「高度再資源化事業」と同様に、「高度分離・回収事業認定者」は一般廃棄物・産業廃棄物処理施設設置許可は不要です、という規定です。
この条文を見ると「高度分離・回収事業認定者」は、処理施設を設置することも想定しているのだと推察できます。そうなると、今回、第16条第1項で解説した「単なる「選別」を想定しているのかもしれません。」ということと矛盾が出てしまいます。
現在の廃棄物処理法第15条で規定する産業廃棄物処理施設には「単なる選別」で設置許可が必要になる施設は無いからです。

BUNさんの考えが違っているのか、それとも、今までの廃棄物処理法の概念を超越する状況を想定した条文なのかは現時点では不明です。

今回(その5)のまとめ

  1. 「高度分離・回収事業」という大臣認定制度を創設。
  2. 「高度分離・回収事業計画認定」を受ければ一般廃棄物・産業廃棄物ともに処分業許可不要。ただし、収集運搬業不要は規定されていない。
  3. 「高度分離・回収事業計画認定」を受ければ一般廃棄物・産業廃棄物ともに処理施設設置許可不要。
  4. 「高度分離・回収事業計画認定」も基準の適用や改善命令等については、「高度再資源化事業計画認定」とほぼ同じ規定。
  5. 詳細については不明な点多し。