リヴァックスコラム

第31回 「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」について聞いてみよう その7

長岡 文明氏

リヴァックスコラム愛読者の「むつご」さんからのご質問を受けて、再資源高度化法を取り上げています。
今回も継続して、法律条文を確認していきましょう。
なお、条文の原文は長いのでネット等でご確認下さい。「BUNさん流簡略表現」になることをご了解下さい。

再資源高度化法逐条確認(第38条~第53条)

第22条から第37条までは、各種「認定」申請を審査する「登録調査機関」に関する規定でしたね。
今回はその次です。

第四章再資源化の実施の状況の報告等

(再資源化の実施の状況の報告)
第三十八条 特定産業廃棄物処分業者は、毎年度、環境省令で定めるところにより、産業廃棄物の種類及び処分の方法の区分ごとに、その処分を行った産業廃棄物の数量及びその再資源化を実施した産業廃棄物の数量その他環境省令で定める事項を環境大臣に報告しなければならない。

条文としては明解で、「実績報告をしなければならない」、という規定です。ただ、ここで「特定産業廃棄物処分業者」ってなんだっけ?ですよね。
この文言が最初に登場するのは第10条なんです。このメルマガでは「当面、大抵の人は直接は関係しないだろう」ということで、飛ばした条文なんです。

「その3」を改めて見てみましょう。

(勧告及び命令)
第十条 環境大臣は、産業廃棄物処分業者であって、その処分を行った産業廃棄物の数量が政令で定める要件に該当するもの(以下「特定産業廃棄物処分業者」という。)の再資源化の実施の状況が、第八条第一項に規定する判断の基準となるべき事項に照らして著しく不十分であると認めるときは、当該特定産業廃棄物処分業者に対し、その判断の根拠を示して、再資源化の実施に関し必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができる。

さらに、ここに登場する「第八条第一項」も振り返ってみてみましょう。

(廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項)
第八条 環境大臣は、資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化を促進するため、環境省令で、次に掲げる事項に関し、廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項を定めるものとする。(「次に掲げる事項」として1号から5号まで規定しています。)

何回か申し上げているとおり、政省令が示されていませんので想像でしかありませんが、どうも次のような制度を想定しているように思えます。

一定量以上の再資源化を実施している「廃棄物処理業者」は、「特定産業廃棄物処分業者」と位置付けられて、一定レベル以上の「質」が求められるようになる。その実績を毎年、国に報告しなければならなくなる。こんなところかと思われます。

廃棄物処理法の規定では、法令上は許可業者の実績定期報告の規定は無くなりました。平成10年頃までは省令で規定していたのですが、「規制緩和」の名の下に廃止された経緯があります。ただ、現実的には各自治体は自分が許可している業者が、どのような処理を行っているかは知っておく必要があることから、多くの自治体では廃棄物処理法第18条の規定により「報告」を求めています。

これを再資源高度化法では、産業廃棄物について資源化の実績を国に報告させる規定を新たに設けた、ということのようです。

この「特定産業廃棄物処分業者」は、法律条文を見る限りは、「再資源化事業認定」、「高度分離・回収事業認定」を受けた事業者に限定している訳では無いようなので、廃棄物処理法許可によりリサイクル事業を営んでいた会社にとっては、「一手間増える」ことになるかもしれません。

以下、第三十九条「権利利益の保護に係る請求」、第四十条「報告事項の公表」と「特定産業廃棄物処分業者」に関する条文が続きますが、「当面、大抵の人は直接は関係しないだろう」と思いますので、飛ばします。

第四十一条からは、「第五章 雑則」、第四十七条からは、「罰則」となりますが、これも「当面、大抵の人は直接は関係しないだろう」と思いますので、当メルマガでは飛ばさせていただきます。

ただ一点。
再資源高度化法の罰則で一番重いのは第四十七条に規定する「一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」で、これは「登録調査機関」に関する内容です。その他の罰則も「登録調査機関」に関することだけで、唯一「特定産業廃棄物処分業者」が勧告に従わない場合は、罰金50万円という規定があるだけのようです。認定事業者についての罰則は無いようです。
これはこの再資源高度化法は「規制法」ではなく、「促進法」すなわち、「やらなければならない」ではなく「やった方がいい」ことを規定している法律であるからと思われます。別の見方をすれば、「規制」に関しては、引き続き、廃棄物処理法に規定している事項を遵守していれば、対応可能と言うことでしょう。

今回のまとめ

  1. 一定量以上の再資源化(リサイクル)を行う人物を「特定産業廃棄物処分業者」と位置付けた。
  2. 「特定産業廃棄物処分業者」は毎年度国に実績報告をしなければならない。
  3. 罰則は「登録調査機関」に関する規定がほとんど。(厳しい罰則は無い)

と言うことで、約半年に亘り取り上げてきた再資源高度化法の逐条確認も終了しました。やうやくこの法律の全体像も見えてきたと思います。

政省令案は未だに提示されていませんので、不明な点も多いですが、再資源高度化法の概要を整理してみましょう。

  1. 既存のリサイクル業者も含めて、一定量以上の再資源化(リサイクル)を行う人物を「特定産業廃棄物処分業者」と位置付け、情報開示や報告が義務付けられる。
  2. 「高度再資源化事業計画認定」を受けることにより、処理業(収集運搬・処分業)許可、処理施設設置許可不要となる制度が創設された。
  3. 「高度分離・回収事業計画認定」を受けることにより、処分業許可、処理施設設置許可不要となる制度が創設された。
  4. 認定の権限は環境大臣であるが、審査(の一部)は「登録調査機関」が行う。
  5. 認定の具体的な「基準」は、現時点では詳細不明。ただし、「温室効果ガス削減」は重要なポイントとなる。

なお、法律附則では「この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」とあります。個人的推測になりますが、附則に定められた施行日よりとんでもなく早く施行された例は無いと思います。よって、再資源高度化法の施行日は「令和7年4月1日」より早いと言うことは、まず無いでしょう。おそらく、附則規定のギリギリの令和7年10月か11月施行ではないかと推察しています。

それまでの間に、各省庁、関係業界等との更なる調整や省令案等のパブコメなどを行うものと思われます。

新たな情報や皆さんからの質問等があれば、今後も再資源高度化法について取り上げていこうかと思っています。