リヴァックスコラム

第34回 重要通知「許可事務通知」で復習 その2

長岡 文明氏

みなさん、こんにちは。
前回から令和2年3月に発出された「許可事務通知」について見てきています。
今回はどういう話ですか?

今回は前回からの続きで「許可申請」に登場する「事業の範囲」からでしたね。

では、復習してその部分を見てみましょう。

ここで登場する「事業の範囲」とは、なんでしたか。

「許可の内容」と言うか、許可を取ったらどんなことができるか?っていうことでしたよね。

そのとおり。

だから、これを逸脱すると途端に「無許可」、
正確に言うと「無許可変更」になるし、その状態で排出事業者が委託すると「委託基準違反」となってしまう。

たしか、無許可は廃棄物処理法では不法投棄と並んで一番罰則が重いんでしたよね。

よく覚えていたね。罰則25条。最高刑懲役5年だね。

無許可業者に委託した排出事業者も同じ罰則なの?

全くの無許可業者に委託したときは、罰則25条で同じなんだけど、
曲がりなりにも許可を持っていて、品目や処理方法が違うのに委託したって時は、
一つ下がって罰則26条。最高刑懲役3年だね。

ん?そこんとこ、よく判らないよ。
「曲がりなりにも許可を持っていて、品目や処理方法が違う」ってどういうこと?

それがまさに「許可事務通知」のこの部分なんだ。

と言うと?

どんな時に「変更許可」が必要か?
これを規定している条文をまず確認してみようか。

(変更の許可等)
第十四条の二 産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者は、その産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業の範囲を変更しようとするときは、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、その変更が事業の一部の廃止であるときは、この限りでない。

「事業の範囲を変更しようとするときは」って規定しているね。

そう。じゃあ、その「事業の範囲」って第何条に規定しているのか?

どれどれ。(パラパラパラ。法令集をめくる音)
廃棄物処理法令集にもだいぶ慣れ親しんだ筈なんだけど、なかなか探せないよ。

無理も無いよ。実は、肝心の「事業の範囲」自体、法律はもちろん、政省令でもどんな事項が「事業の範囲」なのかは規定してないんです。

言葉として最初に登場するのは、法第14条(産業廃棄物収集運搬業許可申請の規定)を受けた省令第9条の2第1項第2号なんだけどね。

どれどれ?省令第9条の2第1項第2号ね。

(産業廃棄物収集運搬業の許可の申請)
第九条の二 法第十四条第一項の規定により産業廃棄物収集運搬業の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した様式第六号による申請書を都道府県知事に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 事業の範囲
三 事務所及び事業場の所在地(以下、略)

許可申請書に「事業の範囲」を書きなさいって規定ですね。

この条文「第九条の二」ということから想像できると思うけど、枝番付き条文でしょ。
廃棄物処理法がスタートした時点では、存在していなかった条文なんです。

でも、法律で「許可取ってからじゃないと業務をしていけない」と規定していながら、
じゃあ、どんな申請したらいいのかってなったときに何にも決めてないって言うんじゃ、困ったでしょうね。

それで「変更許可」という考え方を取り入れるときに、この「第九条の二」という省令条文を追加して申請書の内容を整備した。
ところが、肝心の第2号に規定している「事業の範囲」ってなんなんだ?となった訳ですよ。

そうだよね。
単なる「届出」じゃなく「許可」と規定した内容ですから、重要よね。

調べたところ、この改正が行われたのは昭和52年だったみたいだけど、
この改正までは最初に受けた許可の内容に変更が生じたときは一旦廃止させて、改めて申請させていたみたいだねぇ。
当時は「業許可」は永年制と言うこともあったし、今ほどには重要視していなかったのかもしれない。なにしろ罰則が最高で懲役1年、現在の5分の一。罰金に至っては最高で10万円。

現在、無許可の罰金は1000万円ですよね。100分の一かぁ。
いくら物価が違ったと言っても2桁も違うのは大きいね。

罰則の大きさの違いだけで無く、やはり「変更行為」を「許可」制度にした限りはちゃんと法令で規定するべきでしょうね。BUNさんの想像するに、これは制度設計者の手落ち。エアポケットのように抜け落ちたんでしょうね。
こんな重要な事項は政令か省令でちゃんと規定しておくものだと思う。
でも、既に制度はスタートしているので、しょうがなくて通知で「事業の範囲」を示すことになったのかなぁと推察しているんだ。

じゃあ、最初に「事業の範囲」を明示したのも、前述の改正のあった昭和52年?

そう、昭和52年3月26日の通知だね。

それから約半世紀、こんな重要なことをずっと「通知」で運用してきてるの?

そうだねぇ。

昭和52年以降、業許可は永年制から一般廃棄物は1年そして2年に、産業廃棄物は5年、そして優良認定業者は7年の期限付きに。
「処理業」1本だったものが「収集運搬業」と「処分業」に分割。
特管産廃処理業の創設や一部の許可権限が都道府県から政令市へ、そして一部は再度都道府県に集約へ、等々大きな改正があったのに、この「事業の範囲」については、ずっと「通知」で運用してきているんだ。

そういう意味で、この通知のこの部分は重要ってことね。

じゃあ、あらためてその「事業の範囲」を確認するわね。
「取り扱う産業廃棄物の種類」とこれに加えて、収集運搬業にあっては「積替えの有無」、処分業にあっては「処分の内容」ってことですね。

そのとおり。
ただし、これは「変更許可」の時に改めて取り上げるけど、
「追加」の時は「変更許可」で、「減少」の時は「変更届」となる。

「廃プラスチック類と金属くず」の許可を持っている業者さんが、これに「汚泥」を追加するときは「変更許可」で、
逆に「これからは金属くずは取り扱いません。廃プラスチック類だけにします」って減らすときは変更届でいいってことですね。そのルールはわかっています。

じゃ、今回はこの程度にして「まとめ」もらおうか。

今回の「まとめ」です。

  1. 「事業の範囲」とは、収集運搬業では①積替保管の有無、②産廃の種類、処分業では①処理の方法、②産廃の種類
  2. 「事業の範囲」を規定しているのは法令では無く「通知」
  3. 「事業の範囲」の変更は「追加」は「変更許可」。「減少」は「変更届」
  4. 「変更許可」制度の登場は昭和52年。
  5. 無許可の罰則は現在最高刑懲役5年、罰金1千万円。昭和52年の時は最高刑懲役1年、罰金10万円。