リヴァックスコラム
第五回「委託料金の記載方法」について
豊能郡環境施設組合が、高濃度ダイオキシンを含んだ焼却灰の固化物を産業廃棄物と称して神戸市内の民間最終処分場に埋立委託をしていたことが判明し、大きな問題となっています。
ダイオキシンが高濃度で含まれる焼却灰の場合、コンクリート固化等でダイオキシンを溶出させない加工が必要となりますが、その加工作業を民間事業者が行ったからといって、一般廃棄物の焼却残さ(焼却灰)が産業廃棄物になるわけではありません。
そのため、今回の事件は、あくまでも一般廃棄物の処理方法に関する問題ではあるのですが、通常の産業廃棄物取引の際にも大いに参考になる面がありますので、解説をしておきます。
今回取り上げるのは、豊能郡環境施設組合が産業廃棄物業者と、その仲介会社2社の合計4者で取り交わした契約書の問題です。
2016年7月23日付の神戸新聞の報道によると、
『組合は2月9日、産廃業者や、大阪市と姫路市にある仲介業者2社との4者で覚書を交わし、1キロ当たり3千円で汚染物を処理する契約を産廃業者と締結。
大阪市の仲介業者に処理、運搬費として9650万円を支払った。ただ産廃業者は、姫路市の業者を経由して受け取ったのは約300万円だった』
とあります。
この報道を前提にすると、4者一括契約では、豊能郡環境施設組合の支出総額が9650万円と定められていたものの、仲介手数料や個別の処理費・運搬費の内訳は明示されていなかったようです。
しかしながら、このような契約方法ですと、廃棄物処理法第12条第6項で定める、産業廃棄物処理委託契約書の法定記載事項の一つ「委託者が受託者に支払う料金(同法施行規則第8条の4の2第二号)」を明示していることにはならず、委託基準違反となる可能性があります。
委託者が負担する料金総額は明示していたかもしれませんが、実際に産業廃棄物処理を担う処理業者に支払う金額がわからない契約書では意味がありません。
そもそも、「委託者が受託者に支払う料金」は、産業廃棄物処理業者に適正な処理費を渡し、不適正処理が行われないようにするための法定記載事項なのです。
このように、産業廃棄物処理業者の他に仲介者が存在する場合は、契約金額総額よりも、「産業廃棄物処理業者にいくら支払うか」を明確にする必要があることにご留意ください。
なお、4者一括契約だから違法となるわけではなく、排出事業者と産業廃棄物処理業者との直接契約に仲介業者が参加しているだけであれば、3者一括契約でも5者一括契約でも問題はありません。
排出事業者が産業廃棄物処理業者と直接契約しているかどうかがポイントとなります。別の言い方をすると、仲介業者ではなく産業廃棄物処理業者が、排出事業者から産業廃棄物処理の委託を直接受けているかどうかが、根本的に重要な点となります。