リヴァックスコラム

第5回 ペットボトル通知を読む その3

長岡 文明氏

「BUNさんに聞いてみよう」のコーナー。「ペットボトル通知を読む」その3

※ペットボトル通知… 平成28年1月8日付けで環境省から発出された「店頭回収された廃ペットボトル等の再生利用の促進について(通知)




前回、前々回と平成28年1月に発出された「ペットボトル通知」を読み解いています。
今回は通知の「第2」です。

じゃ、センセ、お願いします。

はい、この第2からは、「こんな制度もあるよ。こういう制度も活用してみたら。」ということで「首長再生利用指定制度」を紹介しています。

第2 廃ペットボトル等の店頭回収に係る再生利用指定制度の活用推進について
1 再生利用指定制度の趣旨

あまり聞かない制度ですね。どんな制度なんですか?

この制度は昭和53年の改正で追加されていて、かれこれ40年くらいの歴史のある制度だね。

その割にはあまり世の中に知られていないんじゃないですか?どうしてなんだろう?

通知の本文では指定制度の趣旨や「個別指定」「一般指定」の解説をしているけど、ここからはBUNさん流の解説にしていきたいと思います。

まず、その根拠の省令を見てみましょう。

第二条 法第七条第一項ただし書の環境省令で定める者は、次のとおりとする。

二 再生利用されることが確実であると市町村長が認めた一般廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者であつて市町村長の指定を受けたもの

産業廃棄物についても同じように規定している。

条文を見ると「リサイクルが確実であれば指定を受ければ許可がいらない。」ってことだけですよね。すごい。循環型社会にマッチする趣旨の規定が40年も前から規定されていたんですね。

でも、繰り返すけど、普及していないですよね

そうなんだ。原因はいくつかあると思うんだけど、BUNさんは最大の理由はまさに
「首長(一般廃棄物は市町村長、産業廃棄物は知事)の指定」というところにあると思う。

と言うのは、市町村は物理的な面積は大きくない。「再生利用されることが確実」となると、その市町村内で発生して、再生するところまで運搬されて、再生もその市町村内で再生されていなければ「確実」として「指定」することは難しい。

そうだよね。

典型的な一般廃棄物である食品残渣で想定すれば、食品残渣を原料として飼料や肥料に再生する工場がA市に立地しているとする。その再生工場に原料として搬入されるのは、数多い家庭や飲食店から出される食品残渣。とてもA市内だけの排出元では足りないよね。近傍のB町やC村からの物も対象にしなければ事業展開は難しいよね。

となるとA市の指定だけでは想定した事業はできないってなっちゃうね。

でも、物理的な面積が相応に広い都道府県の「知事指定」ならこの弱点はクリアできるんじゃないの?

都道府県の許可は産業廃棄物の許可だよね。となると一般廃棄物は「知事の指定」ではできない。これがまず1点目。

次に「個別指定」の時は「再生が確実」なことを担保するために「排出事業者」も限定して「指定」するんです。となると、排出事業者が追加、変更する時はその度に手続きをしなければならい。

つまり「新規のお客様」が増える度に手続きをしなければならないってこと?

それは、面倒だね。なんだったら、最初から産業廃棄物の許可を取った方が手っ取り早いんじゃない?

そうなんだ。そのため産業廃棄物についても「首長の指定制度」という、この制度はあまり活用されてこなかった。

でも、この通知には「一般指定」って制度も取り上げてますよ。

3 一般指定について

これはどういう制度なの?

一般指定は個別指定のように排出者を限定しないんだ。
だから、その指定した地域では、「その指定通りに再生」をやっているのであれば、誰の物を誰がやっても許可不要となるんだ。

すごい制度だね。
循環型社会を推進するにはいいのかもしれないけど、「誰がやっても許可不要」となると許可制度を採用している意味がなくなるね。

そうなんだ。だから、指定した地域内では言葉は悪いけど「無許可業者が大手を振って廃棄物の処理をしている」って状態になる。許可権限者はその行為者を把握することも難しい。

そのため、多くの自治体では「一般指定」ということには二の足を踏んでいるんだ。

再生するのは是非やって欲しいけど、やるなら適正な施設や知識を持っている人にやって欲しいよね。

この制度の実績はあるの?

BUN県では過去に家畜糞尿の堆肥化について個別指定した例はある。
でも、一般指定は一度も無い。噂程度の情報だけど北海道では地域限定、手法限定で家畜糞尿の堆肥化について一般指定しているみたいだね。

北海道は酪農王国だし、他の県から津軽海峡を渡ってまで家畜糞尿を搬入するって事もまずはないだろうからできることだよね。

なるほど、そんな事情も有り「個別指定」も「一般指定」も制度としては昔からあるけど、なかなか活用されてこなかったってことだね。

でも、じゃ、どうして改めてこんな通知を出したのかなぁ。

それは東京都が実証実験的にペットボトルの再生事業をやってみようとした。ところが、廃棄物処理法の種々の規制があり、やりずらい。

そこで、ペットボトルの再生について「知事指定」をやったみたいなんだ。でも、それを見ていた近隣を始めいろんな自治体から「それでいいんだろうか?」と国に質問、意見が相次いだ。

それでこの通知の発出ってなったみたいだね。

へぇー!

聞けばいい制度のようにも思えるけど、この通知が出されて数年が経過していますよね。
あまり浸透していないのでは?

やはり、自治体としては許可権限を持ってその業務をやっている限りは、適正に行われているかを監理監督していきたい。どこの誰かもわからない人物に「再生」と言えども廃棄物処理をやらせる訳にはいかない、としてなかなか一般指定には踏み切れないと思う。

それにいくら東京都が指定しても、今やペットボトルをはじめ産業廃棄物は広範囲に動く。いくら東京都が指定していて許可不要であっても、それが埼玉県や千葉県が排出場所なら、埼玉県や千葉県では許可が必要になる。

なかなか上手く行かないものだね。

まぁ、だからこそ今回のプラスチック資源循環促進法で「製造者・販売者自主回収認定」「排出事業者自主回収認定制度」そして市町村も関与する「容器包装リサイクル法変異形認定制度」を新たに制度化したのかも知れないね。

なるほど。
BUNさんの個人的な観測かも知れないけど、今回のプラスチック資源循環促進法の制度の源流として平成28年のペットボトル通知があったってことだね。

今回はペットボトル通知を題材にして、廃棄物処理法許可制度の難しさ、許可不要制度の複雑さ、首長の指定制度の難しさなどを復習できたよ。

皆さん、BUNさんに聞いてみたいってテーマがあったら是非メールをお願いします。
じゃ、またね。