リヴァックスコラム

第7回 タスクフォース通知を読む その1

長岡 文明氏

「BUNさんに聞いてみよう」のコーナー。「タスクフォース通知を読む」その1




前回まではペットボトル通知についての話でしたが、今回はどんな話ですか?

今回は「タスクフォース通知」を取り上げてみましょう。

「タスクフォース通知」ってなんですか?
廃棄物処理法に関係する内容?

長いですね。それで略して「タスクフォース通知」って言ってるのですね。

これからポイントとなる箇所については抜粋して記載していくけど、全文を読みたい方はネットで検索すると出てくるから興味のある方、業務に関係する方は是非読んでみて下さい。

さて、この「タスクフォース」は通知の題名の通り「再生可能エネルギー等に関する規制等」について省庁の壁を越えて「総点検」してみようということでいろんな分野で行われたようなんだけど、そのうち廃棄物処理法に関係する事項について通知したのが、この通知なんだ。

ふーん。一種の規制緩和ですね。

再生可能エネルギーを活用しようとしたら、既存の法令に引っかかる。そこんとこなんとかならないかって総務省から担当省庁に働きかけたってところでしょうか。
じゃ、いよいよ内容に入って解説してみて下さい。

この通知は第1、第2、第3と大きく3つの事項について触れていて、まず第1は「一般廃棄物及び産業廃棄物の混合処理について」だ。

じゃ、ここから部分的に紹介して解説していこうか。

第1 一般廃棄物及び産業廃棄物の混合処理について
 他人の廃棄物を処理する場合は、当該処理を行う廃棄物の区分ごとに廃棄物処理業の許可を取得する必要があるが、産業廃棄物の区分については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号)第2条において排出元の業種等が指定されているものがあることから、たとえ事業活動に伴って排出される廃棄物が同様の性状を有する場合であっても、当該指定業種等から排出される廃棄物を処理する場合は産業廃棄物処理業の許可が、当該指定業種等以外から排出される廃棄物を処理する場合は一般廃棄物処理業の許可がそれぞれ必要となる。

ここは分かるね。廃棄物処理法の許可は一般廃棄物と産業廃棄物、さらに産廃は普通の産廃と特管産廃に分かれていて、収集運搬業と処分業の許可は別なんですよね。

そして、物理的には同じ物、たとえば、動植物性残渣なんかは、食品製造業から出てくれば産業廃棄物になるけど、飲食店やスーパーマーケットなんかから出てくればいくら事業活動を伴っていても一般廃棄物、いわゆる事業系一般廃棄物になるってルールでしたね。

そのとおり。廃棄物処理法の基礎中の基礎だね。さて、その次。

ただし、同様の性状を有する一般廃棄物と産業廃棄物を、当該一般廃棄物と産業廃棄物の両方の処理業の許可を有する者の運搬車又は施設において混合して処理することについては、法令上禁じられていない。

いよいよ、本当に主張したいことになってきたね。

一般廃棄物と産業廃棄物は別許可だけど、両方の許可を持っていたら一緒に扱っても違法じゃ無いでしょってことですよね。

そうなんだけど、どうも一部の自治体では一廃と産廃を同じ車両に一緒に積むことを止めるよう指導していたところがあったようだね。

そこで、続けて次のように通知した。

ついては、同様の性状を有する一般廃棄物と産業廃棄物の両方の収集運搬業の許可を有する者の運搬車において、搭載する廃棄物ごとに容器を分けること、又はロードセル等の機器で搭載する廃棄物の数量を計測すること等により、それぞれの廃棄物の数量を適切に把握することができれば、他の物と区分して収集・運搬することが義務付けられている廃棄物を除き、同様の性状を有する一般廃棄物と産業廃棄物を混載して運搬しても差し支えない。

混載しても、容器で分別出来るようにしていたり、一回毎に重量を測定出来るように管理していれば、悪いことじゃないでしょってことね。

産業廃棄物の場合は、排出事業者ごとにマニフェストを交付しなければならないから、品目や数量の把握は必要になりますからね。

もちろん廃酸、廃アルカリのように混ぜちゃうと化学反応を起こしたりするものや、感染性廃棄物と普通の汚泥なんかを混ぜたりしちゃだめだけどね。

そういった管理をちゃんとやっているのであれば一般廃棄物と産業廃棄物を混載してもいいんだってことを書いているんですね。

なぜ、「混載禁止」を指導していた自治体があったのかな。

これは個人的な推測なんだけど、おそらく「混載禁止」を指導していたのは都道府県じゃなくて市町村だと思う。
と言うのは、一般廃棄物については市町村に統括的処理責任があるから、ほとんどの市町村では住民から排出される一般廃棄物はもとより事業系の一般廃棄物も受け入れている。

私が住んでいる街もそうです。家庭の生ごみも八百屋さんの無野菜くずや飲食店の残飯なんかは市町村のクリーンセンターで受け入れてくれているよ。

都市部の一部では今でも「ごみ処理無料」だけど、多くの市町村では「ごみ処理有料化」になった。「ごみ処理無料」と言っても当然、ごみ処理にはお金が掛かっている。「有料化」されている市町村でも、徴収している金額では足りず、税金をごみ処理に投入しているんだ。

だから、本来排出事業者が処理経費を負担しなければならない産業廃棄物を一般廃棄物に混ぜられちゃうと、税金で産業廃棄物を処理することになる。過去には、一般廃棄物と偽って産業廃棄物を市町村のクリーンセンターに持ち込んで不法投棄で立件された事件もあったんですよ。

だから、市町村としては一般廃棄物に産業廃棄物を混ざられちゃうことを嫌うわけですね。

ところが、食品残渣のリサイクル事業となれば、受け皿は民間のリサイクラーだし、排出事業者は食料品製造業からの産業廃棄物も飲食店からの一般廃棄物も、集めた以降は同じ処理工程になる。だったら運搬する時も同じ車両で効率的に収集運搬したいってなったんでしょうね。

そんな合法的な行為だったら堂々とやればいいだけの話じゃなかったの。

理屈としてはそうだよ。だから、裁判すれば勝てるとは思う。
とは言え、許可をもらっている地元の市町村とは争いたくない。だから、国から通知の一本も出して欲しいよ。市町村の理屈に合わない指導を是正させてよ。ってことだったんでしょうね。

その際、産業廃棄物の運搬に係る産業廃棄物管理票の交付の義務は従来通り課されることとなる。
 また、同様の性状を有する一般廃棄物と産業廃棄物の両方の処分業の許可を有する者の施設において、当該一般廃棄物と産業廃棄物を混合して保管、投入及び処分しても差支えない。

ここは既に検討した「産業廃棄物ならマニフェストは使わないとダメですよ」ということと、運搬時の混載だけで無く、中間処理もちゃんと許可さえ取っていれば、一般廃棄物、産業廃棄物同時に処理しても違法じゃないんですよってことですね。

この通知の本来の趣旨は、ここで終了。

BUNさん個人としては、ここで止めておけばよかったのに、と思っている。

…と言うのは?

じゃ、最後の一文を見てみようか。

なお、処理後の残さについては、処分した一般廃棄物と産業廃棄物の比率で按分し、以後それぞれの区分の残さとして取り扱っても差し支えない。

どうしてこれが問題なの?当然のことじゃないですか?
一般廃棄物は一般廃棄物、産業廃棄物は産業廃棄物ってことでしょ?

この文章は廃棄物処理法に慣れ親しんでいない人が読むと「えーっ、そんなこと大変だなぁ」と思うし、ある程度廃棄物処理法を勉強して経験を積んだ人は「当然だよね」と感じて、もっと廃棄物処理法に精通している人は「画期的だけど実際の運用は課題満載だなぁ」と感じる。
リヴさんは丁度中間の「ある程度廃棄物処理法を勉強して経験を積んだ人」になるかな。

とりあえず、解説して下さい。

まず、リヴさんの言った「一般廃棄物は一般廃棄物、産業廃棄物は産業廃棄物」これは廃棄物処理法の不文律とも言えるルールで「オリジン説」と言ってるね。分かり易い例としては、市町村のクリーンセンターで一般廃棄物の生ごみを焼却して、その後に排出される燃え殻も一般廃棄物として市町村で処分してるよね。

でも、この工程を辿っていくと、「生ごみを焼却する」という行為は市町村と言えども「事業活動」となる。事業活動を伴って排出される燃え殻は産業廃棄物となる。すると、一般廃棄物がどんどん産業廃棄物に衣替えして言ってしまう。

そこで、「処理する前に既に一般廃棄物である物を処理した場合は、処理した後に出てくる処理残渣物も一般廃棄物である」という原則だね。このオリジン説を知っていて体感している人は「当然だよね」と感じる。

でも、オリジン説を知らない人は「めんどくさいなぁ。全部、産業廃棄物にしちゃえばいいのに」って思う人の方が多いかなぁ。

じゃ、もっと知っている人達が「画期的だけど実際の運用は課題満載だなぁ」と感じる理由を説明して。

まず「画期的」であるポイント。それは、「比率で按分」してよい、という点。
と言うのは、今までは「中間残渣」に言及した通知はほとんどなかったんです。

それはどうしてですか?

中間残渣の扱いは理論と現実の乖離が大きくて、どうしても矛盾が出てしまうからだと思う。

オリジン説を貫こうとすると、一般廃棄物と産業廃棄物を一緒に処理した後に出てくる処理物は「一般廃棄物と産業廃棄物の混合物」になってしまう。だから、この処理後物を扱える人物は「一般廃棄物と産業廃棄物、両方の許可を持っている人物」か「一般廃棄物、産業廃棄物ともに処理業の許可が不要である市町村」等に限定されてしまう。

それを「比率按分」でいいんだ、と明示してもらえれば、産業廃棄物の許可しか持っていない業者でもある程度扱えることになる。たとえば、処理する前に一般廃棄物2トン,産業廃棄物8トンの割合で焼却炉に投入して、燃え殻が1トン出てきたとすれば、そのうち0.8トンは産業廃棄物処理業者が扱えるってことになるからねぇ。

なるほど。燃え殻について一般廃棄物、産業廃棄物両方の許可を持っている業者さんってなかなか居ないものね。たしかに画期的で効率的な運用よね。

で、「課題満載だなぁ」と感じる理由は?

たとえば、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法に基づいてやっているリサイクル工場があるとする。リサイクル工程では必ずと言っていいほど残渣物が発生する。

その残渣物は一般廃棄物なのか産業廃棄物なのか。もし、一般廃棄物であるとすれば、そのリサイクル工場の立地している市町村に残渣物の処理責任は発生してしまうのか?

なるほど、「比率按分」してよいと言っても、そもそもリサイクルする前の廃棄物が一般廃棄物なら残渣物も一般廃棄物になってしまいますね。

今回のプラスチック資源循環促進法の施行通知には、容器包装リサイクル法という廃棄物処理法の特別法に位置付けられるリサイクル工程から排出される残渣物は今までの経緯やその性状等から産業廃棄物として扱われる旨の記載があるけど、じゃ、民間がやっているリサイクルとはどこが違うのか?性状的には同じでは無いか?特別法として位置付けられると言っても、その特別法の方で「リサイクル残渣は産業廃棄物とする」という規定がなされているのか等々課題はあるんだ。

なるほど。プラスチック資源循環促進法の運用とその前の年に発出されたタスクフォース通知の内容で矛盾は無いのかってことになっちゃう訳ですか。

地球に優しいリサイクルが順調に進んでくれるに越したことは無いけど、そういった理屈を悪徳業者に使われると行政としては困ってしまう。

なんとも悩ましい課題ではあるんですね。

だから、今回のタスクフォース通知「再生可能エネルギー」としてバイオマスを活用する事業者も、「比率按分でいい」なんて言わずに、プラスチック資源循環促進法と同じように「全部産業廃棄物でいいよ」って踏み込んでくれないかなぁと思っているかも知れないね。

難しい課題が背景にはあるんですね。

じゃ、次回はタスクフォース通知の「第2」以降を解説してね。じゃ、皆さんまたね。