リヴァックスコラム
第14回 専ら再生通知を読む その2
前回から今年2月3日に発出された「専ら再生利用の目的となる廃棄物の取扱いについて」と言う通知を取り上げています。
前回は
1.なぜ今回の通知は出されたのか?
2.「専ら再生」はなぜ、いつから「4品目」として運用されてきたか
3.通知行政の難しさ
4.一般廃棄物である「専ら再生」の取り扱いは?
と解説してもらっています。
今回はこの続きですね。じゃ、BUNセンセ、お願いします。
はいはい、令和5年の通知が出されたのは「明確化」のためでしたね。
ということは、「専ら再生」という運用は「不明確」な要因がいくつかある、ということである。
じゃ、その要因の一つは・・・ということから話してきましたね。
はい、その一つが法律や政省令では「4品目」と一言も言っていない。
言っているのは遡れば昭和46年、廃棄物処理法がスタートした直後の旧厚生省の通知。直近では令和2年発出の「許可事務通知」というところまで教わりました。
5.バックボーンにある最高裁判決と検事の著作
はい、「4品目」ということは、法律では規定しておらず、単なる通知で述べてあるだけです。
そこで、「おかしいじゃないか。国民のルールである法律では規定していないのだから他の種類の廃棄物であっても、専ら再生しているのであれば許可は不要なんだろ。」ということで裁判まで起こした人がいました。
へぇ!どういう裁判でどのような結果になったんですか?
廃タイヤをボイラーの熱源として活用できるからこれは「専ら再生」として「業許可は不要」ではないかとして、争った裁判で、昭和56年1月に最高裁で判決が出た。
この判決は「専ら再生4品目」を考えるときにとても重要なので、ちょっと長いけど引用して紹介するね。
<判決文>
「もっぱら再生利用の日的となる産業廃棄物とは、「その物の性質及び技術水準等に照らし再生利用されるのが通常である産業廃棄物をいう。当時、一般に再生利用されることが少なく、通常、専門の廃棄物処理業者に対し有料で処理の委託がなされていた本件自動車の廃タイヤは、たとえ、被告人がこれを再生利用の目的で収集、運搬したとしても、廃棄物の処理及び清掃こ関する法律14条1項ただし書にいう『もっぱら再生利用の目的となる産業廃棄物』にあたらない。」
と言うことで、この裁判ではいくら「再生活用」していても、世の中の多くの人が「これは再生される物なんだ」と認識していて、その技術も広く世の中に普及している「廃棄物」に限定されるべきだって判断だね。
言われればもっともな気もする。みんなが「再生できる」って思っている物なら不法投棄されるリスクはぐっと減りますものね。一方、極一部の人しかやっていないってなると再生しない可能性の方が高くなっちゃいますからね。
でも、この最高裁判決でも「4品目」って限定している訳じゃ無いよね。
そうだね。だから、技術が進歩して「専ら再生品目」も変わってくることが想定される。これについては中村明という検事さんが、「環境医事犯罪」という本の中で次のように述べている。
ここは趣旨だけお伝えするね。
<趣旨>
通知では産業廃棄物に関するものだが、一般廃棄物についても同様であろう。しかし、法解釈としては4品目に限定する理由は無い。「もっぱら」とは、社会通念上、通常、再生利用されるものと考えられることを意味し、具体的には、古紙等と同じ程度に再生利用されていることが必要であろう。
そうだよね。
4品目とは限定されずに技術の進歩に合わせて品目が追加されてもいいように思います。
実はそのように考えたのか、この最高裁判決から四半世紀経って、再び裁判が起こされた。
これが廃棄物処理業界では有名な「茨城木くず裁判」。
これは「木くずも今や相応のリサイクル率である。そうであるなら本来の法律の趣旨のとおり処理業許可は不要なのでは」ということが要点の一つであった。
その結果は?
ん~、なんとも玉虫色の決着。
なにそれ?
関係者の方もいらっしゃるだろうし、変に解説して誤解を与えても困るんだけど・・・・。
詳細に正確に知りたい方は判決文や法律の専門家が解説しているのを必ず見てね。あくまでもBUNさん流に言い表すと次のような感じ。
地裁では被告人の勝ち。すなわち「木くずの再生は認められた」。
検察側は控訴しなかったのでここで結審。しかし、この事件を担当した県警は、「この裁判がこのような結果となったのは他の要因もある」旨の文書を出している。
さらに、この事件で既に有罪が確定していた他の人物が「主被告が無罪なら、我々も本来は無罪じゃないのか」と再審請求。これに対して、東京高裁は「有罪は妥当」としたんだ。
なんとも複雑ですねぇ。
そうだねぇ。「古紙等と同じ程度」かと判断するのも一回一回裁判してみないとわからないっていうのもねぇ。
まぁ、これはBUNさんの私見が大分入るんだけど、こんなふうにも感じているんだ。
昭和45年の廃棄物処理法スタート時点では、既に世の中に「廃品回収業」という商売が確立していた。この既得権を持ち、かつ、特段それまでに環境被害を起こすような状況で無かった業態まで規制する必要は無い、として「法律」が作られた。
一方、具体的に許可業務に携わる行政現場では、「専ら再生は許可不要と言われても、どんな商売なら、どんな程度なら許可要らないの?あっちでは要る。こっちでは要らないじゃ公平性を保てないよ」ということもあり国は通知を発出した。それが4品目。
その後時代は進んで「リサイクル」という行為も頻繁に行われるようになった。しかし、リサイクルと言えども原料は廃棄物。リサイクルを騙って環境被害をまき散らす輩も頻発する事態となってしまった。そのため、いくら「専ら再生」と言えども、許可の対象としてコントロールしておきたい。しかし、過去において「4品目」と通知していることもあり、今更「4品目でも許可要りますよ」とは言えない。
そのため、廃棄物処理法がスタートして半世紀。50年が経過しても、やっぱり「専ら再生」は「4品目限定」で通しておかざるを得ないってことじゃないかなぁ。
なるほどねぇ。それに前回の話にあったけど、
今や産業廃棄物は法定受託事務の関係があり「運用は都道府県に任せますよ。これはアドバイスにしか過ぎませんよ。」と言われたんじゃ、余程運用に自信のある県じゃないと踏み切れないよね。ましてや、規模が小さい市町村が「自治事務です」と言われて全国に先駆けて新たな「5品目目」を打ち出すのはなかなかできないわね。
そうだねぇ。それにここ20年位で各種リサイクル法を整備してきていて、それに該当する廃棄物をそれなりの手続きをした人物は許可不要、という制度も出来ている。
たとえば?
食品リサイクル法の「ループ認定」とか、家電リサイクル法の家電販売店とか。
と言うことは、言葉を変えれば、「この廃棄物については、このような手続きをすれば、このような人達は許可不要ですよ」という制度を作っておきながら、「でも、この手続きをしなくても専ら再生なら許可は不要です」とは運用しにくいよね。
そうかぁ。許可不要制度を整備、充実させたがために昔から法律にある「許可不要制度」である「専ら再生」の規定が硬直化してしまったってことかな。
「専ら再生」については、もっと検討する要因があるので、続きは次号としましょうか。