リヴァックスコラム
第16回 専ら再生等の契約書とマニフェスト
みなさん、こんにちは。
「BUNさんに聞いてみよう」というコーナーでやってきているのですが、常連さんから質問メールをいただきました。
いつも参考にさせていただいています。
前回のコラムで、BUNさんが、
「産業廃棄物である「専ら再生4品目」なら、委託契約書は適用になるね。ただし、マニフェスト(産業廃棄物管理票)については、省令第8条の19第3号の規定により不要です。」
というコメントがありました。
この部分について、もう少し解説していただけませんか?
たしかに、「専ら再生4品目」については処理業の許可もマニフェストも要らない、と言っているのに、契約書は要るのか?という疑問だと思います。
じゃ、解説して下さいな。センセ。
はい。廃棄物処理法の実務に携わっている方は、業許可、契約書、マニフェストと3点セットで勉強なさる時が多いために、このような疑問を持たれるのだと思います。
なので、冒頭に言っておきます。「業許可、契約書、マニフェストは別物」だと。
と言うことは、これから説明していただけると思いますが
「業許可不要、しかし、契約書必要」、「業許可必要、しかし契約書不要」、「業許可不要、契約書も不要」・・・といういろんなパターンが存在しているってことなんですか。
はい。では、まず「マニフェスト不要」からいきましょうか。
産業廃棄物であってもマニフェストを交付しなくてもよい,という例外があります。
その一つが今回の質問にあります「専ら再生4品目」として取り扱ったときです。
根拠条文を示しておきましょう。
廃棄物処理法施行規則
(産業廃棄物管理票の交付を要しない場合)
第8 条の19 (中略)
三 専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集若しくは運搬又は処分を業として行う者に当該産業廃棄物のみの運搬又は処分を委託する場合
ちなみに、「専ら再生4品目」については前回までのコラムで詳細に解説しましたが、
昭和46 年10 月16 日、直近では令和2年の「許可事務通知」の中で「産業廃棄物の処理業者であつても,もつぱら再生利用の目的となる産業廃棄物,すなわち,古紙,くず鉄(古銅等を含む),あきびん類,古繊維を専門に取り扱つている既存の回収業者等は許可の対象とならないものであること。」とあり、この通知により4 品目とは「古紙,くず鉄(古銅等を含む),あきびん類,古繊維」として運用してきているんでしたね。
一方、委託契約書は別の条文、法律第12条第6項を受けた政令第6条の2第4号、さらにこれを受けた省令第8条の4等で規定されているのですが、マニフェストの規定とは異なり、これらの条項には「要しない場合」、つまり「例外的に要らないよ」という規定がないのです。
と言うことは、
委託契約書は「専ら再生4品目」であっても、「必要だ」となるんですね。
厳密に言いますと、「正しく」ありません。
と、言うのは、この委託契約書の規定は産業廃棄物についてのみ規定されているルールであり、一般廃棄物については、全ての一般廃棄物について、そもそも委託契約書は法律上規定されていません。
したがって、「産業廃棄物である専ら再生4品目」については、「処理業許可は不要、委託契約書は必要、マニフェストは不要」です。
「一般廃棄物である専ら再生4品目」については、「処理業許可は不要、委託契約書も不要、マニフェストも不要」です。
そうかぁ。委託契約書とマニフェストは産業廃棄物についてだけの規定だから、法律上は一般廃棄物の場合は「不要」となっちゃう訳ですね。通常の一般廃棄物の場合は「処理業許可は必要、委託契約書は不要、マニフェストも不要」となるんですね。
「専ら再生4品目」と同じような運用になっているケースは他にありますか?
さっきは「省略」しちゃいましたが、
省令第8 条の19には「産業廃棄物管理票の交付を要しない場合」として、「市町村へ委託する場合」や「大臣の広域認定で委託する場合」など11の場合を規定しています。
となると、広域認定で委託する場合も産業廃棄物については、
「処理業許可は不要、委託契約書は必要、マニフェストは不要」となるんですね。
そうですね。
ただ、広域認定の場合は、「マニフェストに変わる確実に適正処理を確認できる方法」が求められているので、実質的にはマニフェストを使用しているケースがほとんどでしょう。
他には?
各種リサイクル法で個別に規定していたり、していなかったり・・・。
なに?その言い方?それじゃわからないじゃないですか。
ん~、さっきも話したけど「規定していない」となると「原則通りにやってください」となっちゃうんだけど・・・・。
よくサスペンスドラマや推理小説で「悪魔の証明」って言葉が出てくるんだけど、知ってる?
「無い」ことの証明ですね。「有る」は、その「有る」状態を1個示せば証明は終了。
でも、「無い」を証明するためには、全ての状態を調べ尽くして「無い」ことを証明しなければならないってやつですね。
そう、だから、廃棄物処理法以外のルールである各種リサイクル法まで手を広げるとなかなか大変なんですよ。
じゃ、とりあえず、BUNさんが今頭の中にあるやつだけでいいですよ。
小型家電R法は「許可不要、契約書必要、マニフェスト必要」。
家電R法は「許可不要、契約書必要、マニフェスト必要」。ただし、家電R法で規定するフローで流れる場合は「許可不要、契約書不要、マニフェスト不要」。いわゆる「家電リサイクル券」を発行する流れですね。
食品R法と容器包装リサイクル法はそもそも対象が一般廃棄物なので「許可不要、契約書不要、マニフェスト不要」。
自動車リサイクル法は「許可不要、契約書不要、マニフェスト不要」。
プラ資源循環法は「許可不要、契約書必要、マニフェスト必要」。なお、いずれの場合も、それぞれのリサイクル法で規定している「認定」「登録」「許可」を取っている場合等の制限はあるから注意してね。
各種リサイクル法と産業廃棄物処理業許可・委託契約書・マニフェストとの関係については、JWのテキストに掲載するために作成した一覧を付けてみたので参考にしてみて下さい。
ちょっと方向は違う質問なんだけど・・・
たとえば、空缶は「専ら再生4 品目」の一つですよね。
処理を委託した空缶が不法投棄されるのが心配なので、通常の産廃と同様にマニフェストを使用して運用したいと思います。万が一、持ち出された空き缶が不法投棄された場合、排出事業者の責任は問われますか?
「専ら再生4 品目」は再生ルートで処理されていれば、許可もマニフェストも不要です。
結果論になりますが、再生されていない場合や、質問のように不法投棄された場合などは、そもそも「許可もマニフェストも必要であった」となります。
もちろん排出事業者の責任も問われます。
そうなんだ。「専ら再生4 品目」って取り扱い難しいですよね。
このことは「専ら再生4 品目」に限ったことでは無いんだけど、そもそもなんのために許可制度や委託契約書やマニフェストって法令で規定しているのか。
適正処理のためです。それも排出事業者が自分の出した産業廃棄物が適正処理されているかどうかを確認するという点が大きいんですよね。
そうですね。許可も契約書もマニフェストも「不要だから安心」「交付しているから安心」じゃないんだね。制度の趣旨を理解して、常に適正処理に心がけることが必要かな。
「許可不要制度」は一歩間違うと「無許可」。廃棄物処理法では最も重い罰則の「最高刑懲役5年」の違反に直結するだけに早とちりせず、慎重に検討していく必要がありますね。
じゃ、次回もよろしくね。