リヴァックスコラム
第11回 種々の欠格要件 その2
前回は比較的「直球」の欠格要件による取消を紹介しましたが、今回の事案はちょっと複雑です。
このN社の取消理由は、「株主」が地方税法違反で「執行猶予付きの懲役刑が確定」とあります。法人の役員なら懲役刑という「禁錮以上の刑」で法人も欠格となり許可は取り消されることは前回解説したとおりです。 ところが、今回のN社の事案は、「株主」なのです。5パーセント以上の株式を持っている株主は、許可申請時には届出の対象ですが、法律的には単に「届出の対象」というだけです。 ですから、「株主」というだけなら、いくら懲役刑、禁錮刑になろうとも、それだけでは会社の許可取消には直結しません。
では、この会社はなぜ取消をとなったのでしょうか?それが記事にもある「役員と同等以上の支配力」という要因です。 前回取り上げたように、法人では役員個人の違反も法人の欠格要件になってしまいます。そこで、「じゃ、役員じゃなければいくら悪いことをしても問題ないよね」と登記簿上は役員にならずに実質的に「経営に携わる」という事案が出てきてしまいました。 暴力団がフロント企業を使うようなものですね。
そこで、こういった悪質事案に対応するために、表面上、書類上は法人の役員になっていないとしても、実質的に経営者の立場にいるのであれば、その人物も欠格要件の該当にしようとなった訳です。それが、「役員と同等以上の支配力」という文言になったのです。 では、「役員と同等以上の支配力」とは具体的にはどのような状態なのでしょうか? 過去の事案を見てみると、登記簿上は役員にもなっていないのに、「従業員は<社長>と呼んでいる」とか、「毎朝朝礼で訓示している」とか、「毎週会社の帳簿をチェックしている」といった状況を捉えているようです。 その中でも、表面上、書類上でも比較的わかりやすい「役員と同等以上の支配力」は「株主」です。たとえば、「その会社の株式を全て所有している」となれば、これは絶大な支配力を発揮できます。 株主総会で多数決になったことを想定すれば、51%以上の株を持っていれば、十分に支配力はあるでしょう。
そのように考えていくと、重要議題の発議権、総会開催の請求権等等、持ち株の比率でその法人に及ぼす「支配権」が発生します。 さすがに、一株では総会に出席して発言することは可能でも、それだけでは、「法人の経営に支配力を持つ」とは言えないでしょう。 そこで、「これ以上の株を持っている人物については、会社としても把握していてね」という目安をつくりました。それが、「5%」です。 ですから、5%、6%の株を所有しているからと言って、それだけでは「支配力有り」とはなりません。 数十%(50%未満ではあります)の株を持っている人物が被後見人(欠格要件の一つ)になったのですが、その人物は親が持っていた株式を相続により引き継ぎ、相続後は一度も会社に来たこともなく、株主総会に出席したこともなかったことから、「経営への支配力は無し」として、取消にはならなった事案もあったようです。
そのため、株主であることを理由とする許可の取消は、役員の「禁錮以上の刑」や「許可取消による連鎖取消」とは異なり、聴聞を行わなければならない、というルールなのです。 「聴聞」とは、行政が不利益処分(許可取消、事業停止、措置命令等)を行う時に、処分される人物から事実関係に間違いは無いか、そちらからの申し立てはないか等を直接聞くものです。その上で、行政の判断に間違いない、となって初めて許可取消等の行政処分を行う、というものです。
プラスアルファの話ですが、前回の役員の欠格と今回の聴聞の話を組み合わせると、次のような「ズル」が出てきます。 会社の取消処分が内定して、聴聞通知が来たとします。「取り消された会社の役員も欠格者」となりますので、「泥船で一緒に沈んではいられない」と役員は辞任、いわゆる「足抜き」を行います。しかし、そんなことを許していたら、真に悪い人物をいつまでも泳がしてしまうことになります。そこで、10年ほど前の改正になりますが、「聴聞通知が届いた日から遡ること60日前に役員である人物はやっぱり欠格者」という規定も作っています。 なお、欠格要件の規定は極めて複雑です。万一、関係者が違法行為等をやってしまった場合は、すみやかに行政窓口か、廃棄物処理法に詳しい弁護士さん(弁護士と言えども、必ずしも廃棄物処理法に詳しい人ばかりではありません。廃棄物処理法に精通している弁護士を選びましょう(^O^))に相談してください。
BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/