リヴァックスコラム

第四回「食品廃棄物不正転売事件」について ~その4~

尾上 雅典氏

今回も、前号に引き続きダイコー事件に端を発した環境省の「不正転売の再発防止策(以下、「再発防止策」)」の実効性について検討を進めます。
今回は、再発防止策の「排出事業者に係る対策:食品廃棄物の転売防止対策の強化」の部分について。

まず、「(排出)事業者責任に基づく必要な措置(処理状況の確認や適正な処理料金による委託等)についてチェックリストを作成」という部分について。
ここに書かれたチェックリストは、排出事業者が違法なことをやっていないかを自己チェックするためのものと思われますが、「再発防止策」には、「(チェックリストを)都道府県に通知し、関係事業者への指導に当たり、その活用を推進」とあるので、行政官が立入検査等の際に、排出事業者に示す様式となりそうです。むやみに大量なチェックリストではなく、現場で使いやすく、かつ最低限度の排出事業者責任を認識させる効果を持ったチェックリストにしていただきたいものです。

次に、食品関連(排出)事業者に対し、「食品ロスの削減」「やむを得ず食品を廃棄する場合には、そのまま商品として転売することが困難となるよう適切な措置を講じること」「廃棄食品の処理について適正な料金で委託すること」の3項目が要請事項として挙げられています。
「転売困難となるような措置」というのは、おそらく、ダイコー事件発生直後に壱番屋が発表した再発防止策をそのまま取り入れたものと思われます。
具体的には、「廃棄品と包材を分離」することや「廃棄品を生ごみに混ぜ込む」ことを指すようですが、いずれも非常に手間とコストが掛かる手法です。
確かにこれらの手法を実行すれば、食品として転売される確率はゼロに近くなりますが、廃棄品に対し、さらに生ごみを混ぜこむこと自体が無駄です。
排出事業者においても、人件費の制約がある以上、無条件で生ごみの混ぜ込みを続けられるとは思えません。

その次の「食品関連事業者が取り組むべき措置の指針(判断基準省令)の見直しを検討」の部分でも、具体例として、「食品廃棄物をそのまま商品として販売することが困難となるような措置」と挙げられています。

もしも、今回取り上げた項目が「食品廃棄物の不正転売防止のための措置に関するガイドライン」として結実したとしても、法規制ではなく、ガイドラインという位置づけに止まる以上、食品排出事業者へすぐに規制が強まるという事態は考えにくいです。
「ガイドライン等が策定されると、行政からの食品を扱う処理業者への立入検査が増えるのではないか」と考える方がいるかもしれませんが、行政のマンパワーや予算の制限を考えると、ダイコー事件発生直後はともかくとして、食品を扱う処理業者のみをターゲットとした指導監督を行う余裕はなさそうです。
ただし、主に食品衛生の観点から、食品衛生部局と廃棄物部局による共同立入検査を検討している自治体が増えていますので、行政から検査される機会は若干増えるかもしれません。