リヴァックスコラム

第六回 「国交省カメラ横流し事件」について

尾上 雅典氏

ダイコー事件に引き続き、再び廃棄品の横流し事件が発覚しました。

2016年8月10日付 国土交通省発表
「廃棄処理することとしていたカメラ装置のオークションへの流出について」
国土交通省HP(報道・広報)詳細ページ


今回の事件で転売された廃棄物は元々の換価価値が高いカメラ機器でしたので、廃棄品横流しの典型的な事例と言えます。
今号では、横流しをした処理業者よりも、国土交通省と国土交通省のカメラ装置処理を受任したM電機に焦点を当て、廃棄物処理法上の問題点が無かったかを考察します。

国土交通省の発表では

(発注者?)  (排出事業者?) (収集運搬業者?)  横流しをした処分業者
国土交通省  ⇒  M電機  ⇒   下請    ⇒    再下請
と、あたかも国土交通省は“ただの”発注者であるかのように書かれています。

しかしながら、カメラ装置はそもそも国土交通省の3地方整備局が使用していたものですので、カメラ装置の処理責任は国土交通省にあると考えるのが自然です。

そう考えると、各当事者は以下のような位置づけにあったものと思われます。
(排出事業者) (無許可営業?)
国土交通省  ⇒  M電機  ⇒ 収集運搬業者  ⇒ 横流しをした処分業者

こうなると、M電機には「産業廃棄物処理業の無許可営業」、国交省には「無許可業者への委託」という、重大な法律違反を起こしていたことになります。

M電機が無許可営業にならないためには、カメラ装置が、国交省の廃棄物としてではなく、M電機が排出した廃棄物として認められるものでなければなりません。

廃棄物処理法上、そのような解釈が認められるケースは2パターンしかありません。
すなわち
・「カメラ装置の所有権は、国交省ではなく最初からM電機が保持していた」
・「M電機が新品のカメラ装置を販売することとなり、旧装置を無償で下取りした」
のいずれかです。

商取引の一環としてよく行われるのは、後者の「下取り」だと思いますので、下取りの際の注意点をまとめておきます。
他者が排出した廃棄物を下取り回収の対象とする場合は、「無償で回収」というのが絶対条件です。

無償ではなく有償で、すなわち処理費を徴収しながら廃棄物を受け取る場合は、当然、廃棄物処理業の許可が必要となります。

無償で回収する場合に限り、商慣習の一環として、業許可なしに他者の廃棄物を持ち帰ることが認められています。

そのため、カメラ機器更新に伴い、M電機が「下取り費用」や「廃棄処理費」等の名目で、1円以上の代金を請求していた場合、下取り回収スキームは成立しません。

ちなみに、下取り回収スキームが成立するためには、「無償」と「商慣習の一環」の他にも、「同種の製品」で「使用済みのもの」の回収、という条件も満たしている必要があります。


また、カメラの更新は、建設工事には該当しませんので、廃棄物処理法第21条の3の「発注者ではなく、元請業者が建設廃棄物の排出事業者になる」という条文は当然使えません。