リヴァックスコラム
第10回 通知の取扱いについて
このコラムは「通知」をテーマにお送りしているのですが、この「通知」について大きな出来事がありました。それが、今回紹介する平成12年の通知です。
<通知詳細>
平成一二年一二月二八日 生衛発第一九〇四号
各都道府県・各政令市宛 環境省
地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律等の施行に伴う通知の取扱いについては、(中略)その事務の運営にあたってよろしく配慮願いたい。
4 次の通知を廃止する。
(1)
昭和四十七年一月十日付け環整第二号厚生省環境衛生局環境整備課長通知「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の疑義について」
(2)
昭和五十年四月九日付け環整第三六号厚生省環境衛生局環境整備課長通知「廃棄物の定義について」
(3)
昭和五十二年十一月五日付け環産第五十九号厚生省環境衛生局水道環境部参事官通知「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の疑義について」
(中略)
(22)
平成十年十一月十三日付け衛産第五一号厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課産業廃棄物対策室長通知「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部改正について」
この通知の内容は、次のようなことです。
これからは地方分権の時代だ。廃棄物処理法をはじめとする法定受託事務は、地方自治体にお任せしたのだから、その解釈、運用もお任せする。
ついては、今まで国が示してきた「疑義応答」などの通知は廃止する。
具体的に廃止する通知は、次の22の通知である。
これにはびっくりでしたね。ここ10回ほどで「通知」について勉強してきていただいた皆さんならわかっていただけると思うのですが、法令の規定なんて、日本語ではないんじゃないかと思うほどの難解な文章で、結局、実際の運用は通知に従って動いていることがいっぱいある。
別の言い方をすれば、「通知」をルール、基本として判断、行動してきたのに、そのルールを取り払われるって事態になった訳です。
そもそも、「法定受託事務だ」「地方分権の時代だ」と言ってみたところで、法律を作るのは国です。自分たちで作っておいて、その後の運用だけを自治体が勝手にやっていいよ、と言われたところで、どうやっていいものやら。日本はアメリカやロシアと違って、国土がそう広いわけではありません。言語も一つ、歴史、文化にしたところで、そんなに違いがあるわけではありません。ましてや、産業廃棄物の処理は一つの自治体で処理が完結するものでもありません。
そのため、BUNさんは今でも、少なくとも、産業廃棄物に関するルールは「中央集権で十分」と感じています。
<閑話休題>
そうは言っても、国からこのような通知が出され、今まで根拠としていた「通知」、しかも、廃棄物処理法を運用していく上で、最も問題となることについて解説していた「法律の疑義について」という通知が、ほとんど廃止されてしまいました。
自治体によっては、その後独自に解釈通知を発出したところもあるようですが、ほとんどの自治体では改めての通知は発出せずに、それまで国(具体的には旧厚生省)から発出されていた「廃止通知」を前例踏襲の形で、「そのまま」運用してきているのが、実態です。
なお、こういう実態にあることから、本来であれば廃止された通知は、いろんな文献からは削除されるのが通例ですが、以前にも紹介している日環センターの「廃棄物処理法の解説」には、「廃止通知」も掲載しています。
今回、この「廃止通知の通知」をなぜ紹介したかというと、前述の通り、結構身近でよく出る質問に関することが多いんです。
では、以下に抜粋して紹介しましょう。
<廃止疑義応答>
廃棄物の処理及び清掃に関する法律の疑義について
昭和四七年一月一〇日 環整第二号
廃止:平成一二年一二月二八日(なお、以下の通知の廃止日も前述の通り、全てこの日です)
問1 処分の用語の定義を明示されたい。
答 中間処理及び最終処分の意である。なお、中間処理には、焼却、脱水、破砕、圧縮等があり、最終処分には、埋立処分と海洋投入処分がある。
問2 一般廃棄物及び産業廃棄物の最終処分の方法は、埋立処分と海洋投入処分に限るものと解してよいか。
答 そのとおりである。なお、放流方式による下水道、又は公共の水域への排出は、最終処分の一方法と考えられるが、それぞれ下水道法又は水質汚濁防止法の定めるところにより行なわれるものである。
問16 令第一条第二号に規定する輸入木材の卸売業に係る木くずとは、輸入木材の輸入を業務の一部又は全部として行なつている総合商社、貿易商杜等の輸入業務活動に伴って生ずる木くずをいうものであると解してよいか。
答 貴見のとおり解して差し支えない。
昭和五二年一一月五日 環産第五九号
問12 産業廃棄物の処理に関し、廃棄物処理法第七条第六項に規定する事項を記載した伝票を綴じて保存している場合は、同項にいう帳簿を備えたこととなるか。
答 当該伝票が帳簿の一部として使用することを予定されているものであれば、伝票を綴じて保存していることによつて帳簿を備えたものと解する。
問19 廃棄物処理法施行令第七条第一号から第八号までに掲げる産業廃棄物処理施設の一日当たり処理能力とは、何を意味するか。
答 当該施設が一日二四時間稼動の場合にあつては、二四時間の定格標準能力を意味する。それ以外の場合は、実稼動時間における定格標準能力を意味する。ただし、実稼働時間が、一日当たり八時間に達しない場合には、稼動時間を八時間とした場合の定格標準能力とすること。
昭和五四年一一月二六日 環整第一二八号・環産第四二号
問1 一〇%の銅を含むレンガくずを有償で売買しているが、レンガくずだけを廃棄物と考えられるか。
答 総体としてレンガくずは有価物である。
問2 水力発電所のダムの管理に当たり、不要として排出された流木は一般廃棄物と解してよいか。
答 お見込みのとおり。
問3 野犬狩りの後保健所がその死体を焼却した際の残灰は、一般廃棄物と解してよいか。
答 お見込みのとおり。
問4 個人家屋を自ら解体する場合の廃木材はどのように扱うべきか。
答 個人家屋を自ら解体する場合の廃木材は当該住民の排出する一般廃棄物である。
問10 事業活動に伴つて排出された使用済みの活性炭は産業廃棄物のどの種類に該当するか。
答 不純物が混在すること等によりでい状で排出されるものは汚でいに、固型状で排出されるものは燃えがらに該当する。
問11 コンクリート・ミキサー車のミキサーから生ずる生コンの残りかすであつて、不要とされた時点ででい状を呈しているものは法第二条第三項に規定する汚でいと解してよいか。
答 お見込みのとおり。
問15 事業活動に伴って排出される、①液状の廃合成塗料、②塗料以外の不純物が混合して、でい状となつている廃合成塗料、③溶剤が揮発し、固型状(粉状のものを含む)となつている廃合成塗料はそれぞれ産業廃棄物のどの種類に該当するか。
答 ①は廃油と廃プラスチック類の混合物に、②は汚でい(油分を五%以上含んでいる場合にあつては汚でいと廃油の混合物)に、③は廃プラスチック類に該当する。
問21 金属の研磨工程から排出される研磨かすは産業廃棄物のどの種頬に該当するか。
答 金属くずに該当する。ただし、粉末状又はでい状を呈し、金属としてとらえることが困難な場合には汚でいに該当する。
問28 動物霊園事業として愛がん動物の死体を処理する場合廃棄物処理業の許可を要するか。
答 愛がん動物の死体の埋葬、供養等を行う場合、当該死体は廃棄物には該当せず、したがつて廃棄物処理業の許可を要しない。
問29 いわゆる下取り行為には収集運搬業の許可が必要か。
答 新しい製品を販売する際に商慣習として同種の製品で使用済のものを無償で引取り、収集運搬する下取り行為については、収集運搬業の許可は不要である。
昭和五七年六月一四日 環産第二一号 (地下工作物の埋め殺し)
問11 地下工作物が老朽化したのでこれを埋め殺すという計画を有している事業者がいる。この計画のままでは生活環境の保全上の支障が想定されるが、いつの時点から法を適用していけばよいか。答 地下工作物を埋め殺そうとする時点から当該工作物は廃棄物となり法の適用を受ける。
(墓の廃棄)
問12 古い墓を除去して廃棄しようとする場合、廃棄物として取り扱つてよいか。
答 墓は祖先の霊を埋葬、供養等してきた宗教的感情の対象であるので、宗教行為の一部として墓を除去し廃棄する場合、廃棄物として取り扱うことは適当でない。
(清掃後の産業廃棄物)
問14 清掃業者が事業場の清掃を行った後に生ずる産業廃棄物について、その排出者は清掃業者であると解してよいか。
答 当該産業廃棄物の排出者は事業場の設置者又は管理者である。清掃業者は清掃する前から事業場に発生していた産業廃棄物を一定の場所に集中させる行為をしたにすぎず、清掃業者が産業廃棄物を発生させたものではない。
ね、紹介したBUNさんも面白くてついついいっぱい掲載しちゃいました。とても、30年前、40年前の疑義応答とは思えないような、今日現在セミナーをやれば、常連のように提出される質問ばかり。
しかも、簡潔明瞭でわかりやすいですよね。これが廃止されたのは、正直痛かったです。 なお、大阪府をはじめいくつかの自治体では、府民・県民の要望にお応えして、かつてあった疑義応答を、(多少、時代変化に合わせて、バージョンアップして)ホームページに掲載しているところもあるので参考にしてみて下さい。
BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/